日本糖鎖科学コンソーシアム(JCGG) 会長 遠藤 玉夫 先生を偲ぶ

 去る2024年10月9日、本シンポジウムを目前に控えた折、日本糖鎖科学コンソーシアム会長の遠藤玉夫先生が急逝されました。突然の訃報に接し、深い悲しみと喪失感に包まれております。

 遠藤先生は、広く知られている通り、糖鎖生物学の分野で卓越した業績を残された世界的に著名な研究者であり、特に筋ジストロフィー(α-ジストログリカノパチー)の病態医学の領域を世界に先駆けて切り開かれました。遠藤先生のO-マンノース型糖鎖の構造解明と機能解析に関する研究は、糖鎖が関与する新たな筋ジストロフィーの病態理解に革新的な進展をもたらしました。また、老化関連疾患における糖鎖の役割に関する研究でも多大な貢献をされました。周知の通り、これまでの遠藤先生のご研究は糖鎖科学の発展に大きな足跡を残されており、その業績は国内外で高く評価されてきました。

 遠藤先生は、東京大学医科学研究所助手以降、東京都老人総合研究所室長を経て、東京都健康長寿医療センター副所長、所長代理、現・シニアフェローに至るまで、一貫して糖鎖科学の最前線でご研究を展開されてきました。こうした長年にわたる活動の中で、2007年には朝日賞、2017年には日本学士院賞を受賞されるなど、数々の栄誉に輝かれております。学術面での輝かしい業績に加え、遠藤先生は本JCGGの会長として、国内外での糖鎖研究の推進に多大な貢献をされました。国内では日本糖質学会の会長、日本生化学会の理事・常務理事をはじめ数多くの学術学会の評議員・代議員や理事などを歴任されたほか、さらには日本学術会議会員としても活躍され、我が国の学術振興や研究開発支援事業にも尽くされました。

 遠藤先生は、単に優れた研究者であっただけでなく、多くの糖鎖研究者にとって敬愛する同志であり、師でもありました。本コンソーシアムのシンポジウムや様々な学術学会の活動を通じて、数多くの研究者が遠藤先生の的確なご助言と暖かな激励を受けてきました。先生の温和なお人柄と卓越した研究への洞察力は、多くの人々の心に強く響いていることと思います。

 この度の突然の訃報に際し、言葉に尽くせぬ喪失感を覚えますが、先生が残された偉大な業績と、糖鎖科学の発展に対する情熱は、これからも私たちの研究活動の道標となり、励みとなることでしょう。JCGGは遠藤先生の遺志を受け継ぎ、糖鎖科学のさらなる発展に向けて邁進する所存です。

 ここに謹んで哀悼の意を表し、遠藤玉夫先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。長年にわたるご指導とご貢献に、心より感謝申し上げます。

日本糖鎖科学コンソーシアム
副会長 西原祥子
副会長 平林淳
常任幹事、幹事、監事 コンソーシアム関係者一同