会長あいさつ
会長からのご挨拶 |
日本糖鎖科学コンソーシアム会長 西原祥子 |
皆様へ
このたび、日本糖鎖科学コンソーシアム(JCGG)の会長を拝命いたしました西原祥子です。JCGGは、初代会長の永井克孝先生をはじめ、川嵜敏佑先生、谷口直之先生、そして直近では遠藤玉夫先生が、その発展に尽力されてきました。偉大な先達の後を継ぐことに大きな責任を感じるとともに、糖鎖科学のさらなる発展とJCGGの成長に尽力してまいります。
JCGGは、毎年シンポジウムを開催し、本年で第22回を迎えます。このシンポジウムは、糖鎖研究者の交流・情報共有の場としてだけでなく、さまざまな分野との融合研究の場としても重要な役割を果たしています。今後も皆様のご協力のもと、より充実した内容となるよう努めてまいります。
また、JCGGは糖鎖科学の発展に貢献した研究者を顕彰するため、2016年に「Tamio Yamakawa Award(山川民夫賞)」を創設し、2年ごとに授与しています。これまでに、Markus Aebi 博士(ETH Zurich)、Gerald Hart 博士(Johns Hopkins大学)、James Paulson 博士(Scripps Research Institute)に授与され、第4回では Richard Cummings 博士(Harvard Medical School)が受賞されることが決定しました。今後も本賞を通じて、糖鎖科学の発展に寄与した研究者を称えてまいります。
日本の糖鎖研究は国際的にも大きく貢献してきましたが、糖鎖の構造的複雑さゆえに、他分野の研究者にとって理解しづらい側面もありました。このため、異分野融合研究を推進し、糖鎖解析技術の開発を進めることが重要です。特に、近年急速に発展しているAI技術の活用も大きな課題となります。さらに、糖鎖科学は生命科学の基礎研究にとどまらず、医療、食品、エネルギー、材料分野においても応用の可能性を広げる総合科学です。この観点から、JCGGでは糖鎖研究の未来を見据え、2018年に策定した「未来を創るグライコサイエンス:我が国のロードマップ」を更新し、「ロードマップ2025」の作成を進めています。今回は、医療分野はもとより、食品、材料、情報といった領域においても項目をより充実させ、糖鎖科学のさらなる発展に向けた指針を示してまいります。
また、NCBIのBookshelfに掲載されている「Glycoscience Protocols (GlycoPODv2)」(JCGGから出版)については、今後も2〜3年ごとに最新の進歩を反映し、更新を続ける予定です。これにより、糖鎖科学の知見を広く共有し、研究者や学生の皆様の学びの一助となることを目指します。
この様なJCGGの活動は、皆様のご支援とご協力によって成り立っています。ロードマップやGlycoPODv2への寄稿、また、財政面では、個人のご寄付、出版の印税、シンポジウムの会費、水谷糖質科学振興財団のご支援、協賛企業の皆様からの広告や展示のご寄付に心より感謝申し上げます。JCGGのさらなる発展、糖鎖科学の発展、そして次世代の若手研究者の育成のために、皆様のご理解とご協力が不可欠です。引き続き、JCGGをどうぞよろしくお願い申し上げます。
皆様からの率直なご意見やご提案をお待ちしております。
2025年3月
日本糖鎖科学コンソーシアム(JCGG)会長
西原祥子