JCGGシンポジウム
複合糖質の統合的理解と疾患の解明をめざす先端的・国際研究拠点の形成に向けて
生命科学における糖鎖の底力 -生活習慣病と糖鎖科学-
井ノ口仁一
第11回目を数える今回のJCGGシンポジウムは、「生活習慣病と糖鎖科学」というタイトルで開催することに致しました。多様な生命現象において、糖鎖の果たす役割は多岐にわたり、固有かつクリティカルで、その正確な理解は健康維持、疾病の治療に不可欠であります。生活習慣病とは、「食、運動、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義されています。その実態は、生体の恒常性維持機構の破綻がもたらす様々な病態を包含するものであると考えられます。その中で、内臓脂肪型肥満から引き起こされるインスリン抵抗性を基礎病態とする、高脂血症・高血圧・糖尿病・動脈硬化症などのメタボリックシンドロームという疾患概念が定着してきました。同様に、食習慣との関係から循環器病、大腸癌や歯周病、また、喫煙との関係からは肺扁平上皮癌や呼吸器疾患(COPD等)があげられます。さらに、生活習慣における糖・脂質代謝異常は、認知症などの神経疾患のリスクファクターであることもわかってきました。近年の糖鎖研究により、これら多くの病態に糖鎖の発現異常が関与していることが証明されつつあります。そこで今回、生活習慣病における糖鎖研究の成果、さらには応用糖質科学の最近の進歩を俯瞰することを目的としたシンポジウムを企画いたしました。特別講演は、本シンポジウムが開催される仙台の地で活躍されている、片桐秀樹先生と大隅典子先生にお願いしました。片桐先生からは、メタボリックシンドロームにおける臓器間ネットワークについて、大隅先生からは、統合失調症および加齢性難聴との関連について、最新の研究成果をご講演いただけることになりました。
本シンポジウムを通じて、日本における糖鎖研究の重要性に対する理解が深まり、世界をリードする研究拠点形成に向けて少しでも貢献できれば幸いです。
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