シアル酸研究会の歩み
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シアル酸を基本構造とした生理活性物質の探索研究を始めたころ(1978年)は、シアル酸と細胞核内物質との結合を第一テーマとし、まず、Nアセチルノイラミン酸の立体構造を明らかにするところから研究を始めた。この研究テーマは、1964年、北里大学に薬学部が設置され、その出発点にあたって薬化学教室の研究中心テーマとした、「ヌクレオシド類の合成研究」の発展に位置づけたものである。
初めてのシアル酸関連報告は日本薬学会第100年会(1980年)で行ったが(1,2)、この研究は生化学、薬理学、合成化学の各分野の研究者が共同して行わなければ成果が上がらないと考え、研究勉強会を行う必要を感じた。このようにして、第1回の会合を北里研究所会議室で行った。
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1) 小倉、岩木、古畑 日本薬学会第100年会、1980、2192)
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2) 小倉、古畑 同上、133
■プログラム
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(1) シアル酸の研究(N-アセチルノイラミン酸の化学)
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北里大学薬学部 古畑公夫
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(2)マイクロカロリーメトリーとシアル酸
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河野臨床医学研究所 伊藤正次郎
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(3)シアル酸と血漿の熱反応と赤血球糖蛋白(シアル酸)含量との関係
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河野臨床医学研究所 山田陽子
出席者:
北里大学 堀田恭子(医学部)、小倉治夫、伊東常男、古畑公夫、高橋 洋、武田収功、岩木和夫(薬学部)
北里研究所 秦 藤樹、佐野敬元、木村 明
河野臨床医学研究所 伊藤正次郎、峯尾 哲、山田陽子、岡本 恵
関東医師製薬㈱ 伊藤正善
(14名)
その後、この研究会を随時開催して、研究連絡を行うと共に、研究遂行に必要な課題に関係する講師を招いて勉強を続けることとなった。この間の研究結果は「シアル酸の誘導体と立体化学」と題して、第23回天然有機化合物討論会(1980年、7月)で報告した。(注)
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注)小倉、古畑、志鳥、伊藤 第23回天然有機化合物討論会、1980、295
シアル酸研究会の必要性を強く感じたので、当時、下記のような趣意書を作って、活発に活動する基とした。すなわち、『シアル酸関連物質は、生体機構の重要な役割を担っていることはよく知られた事実であります。我々はこの点に注目して種々の研究を進めておりますが、生化学、薬理学、合成化学の各分野の研究者の共同研究であるために相互の研究連絡が重要な課題となるのであります。そこで、連絡会の開催が強く要望され、すでに第1回の会合を去る1980年6月21日北里研究所会議室で行ったのであります。その後、半年を経ましてますます研究連絡会の必要性を感じ、非公開の形式のまま「シアル酸研究会」として正式に発足させたいと存じます。「シアル酸研究会」は随時開催しまして研究連絡を行うと共に、研究遂行に必要な課題については、講師を招いてお話を聞き、お互いに切磋琢磨して行きたいと存じます。小倉治夫』というものであった。
■プログラム
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(1) T Cell Subsetsとシアル酸
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東京大学薬学部 大澤利昭
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(2)Neuraminidase のヒト白血球に対する影響
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慈恵医大 富田有祐
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(3)シアル酸誘導体の合成
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北里大学薬学部 古畑公夫
出席者:
北里大学 小倉治夫、古畑公夫、高橋 洋、岩木和夫
北里研究所 佐野敬元、木村 明
河野臨床医学研究所 伊藤正次郎、峯尾 哲
慈恵医大 富田有祐、大井美佐子
東京大学 大澤利昭
関東医師製薬㈱ 伊藤正善、小笠原定則、木島 功
(14名)
■プログラム
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(1) 細胞膜合成阻害剤としてのシアル酸誘導体の研究
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Tulane University, School of Medicine Professor Krishna C. Agrawal
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(2)N-アセチルノイラミン酸の合成
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北里大学薬学部 古畑公夫
出席者:
北里大学 小倉治夫、古畑公夫
北里研究所 秦 藤樹
河野臨床医学研究所 伊藤正次郎、峯尾 哲、山田陽子
東京大学 木島 巧
Tulane大学 Krishna C. Agrawal 夫妻
関東医師製薬㈱、志鳥善保、伊藤正善、小笠原定則、高田欣二、九合正二郎
(14名)
この年は、日本薬学会第101年会(1981年)において、シアル酸の誘導体合成法について、報告することが出来た(4,5)。また、琵琶湖畔で行われた第1回日仏シンポジウム(1981年5月)において、シアル酸のヌクレオシド誘導体の合成法について報告し(6)、第6回 Glycoconjugates において、大澤教授らと共同で、前記の化合物に顕著な免疫調節作用があることを発表した(7)。更に、第9回核酸化学シンポジウム(1981年10月)において、N-アセチルノイラミン酸の新規なO-グリコシドの合成法を発表した(8)。
N-アセチルノイラミン酸の基本構造を解明すべく、各種誘導体のCD曲線を測定して、αアノマーとβアノマーの決定を行い、Tetrahedron Lett.に報告した(9)。
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4) 小倉、古畑 日本薬学会第101年会、1981、481
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5) 小倉、岩木、陳、武田、古畑、同上、481
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6) H.Ogura, K.Furuhata, H.Takahashi, Proc.1st French-Japanese Symp. on Med.Fine Chem., 1981, 50
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7) H.Ogura, K.Furuhata, I.Kijima, S.Toyoshima, T.Osawa, Proc. 6th Glycoconjugates, 1981, 481
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8) H.Ogura, K.Furuhata, K.lwaki, H.Takahashi, Nucleic Acids Res. S10, 23(1981)
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9) H.Ogura, K.Furuhata, Tetrahedron Lett., 22, 4265 (1981)
■プログラム
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(1) シアル酸誘導体の合成
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北里大学 小倉治夫
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(2)シアル酸誘導体とその生物活性について
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東京大学 豊島 聡
出席者:
北里大学 小倉治夫、古畑公夫
東京大学 大澤利昭、豊島 聡
北里研究所 秦 藤樹
東京都臨床医学総合研究所 山川民夫
鳥居薬品㈱ 天野正文、青山卓夫、来海正輝
関東医師製薬㈱ 志鳥善保、西川裕、待場光雄、伊藤正善、堀内次郎、小笠原定則、高田欣二、吉村昌治、杉山直和、木嶋 功;東京薬科大学、菊池豊彦
(20名)
次回には日本におけるシアル酸研究の創始者である山川民夫先生に、シアル酸研究の歴史的なお話しをお願いすることにした。
この年は、日本薬学会第102年会(10,11,12)及び第5回糖質シンポジウム(13)においてN-アセチルノイラミン酸誘導体の合成について多くの報告を行うことが出来た。また、大澤教授の免疫調節研究は学会誌上を飾った(14)。
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10) 小倉、古畑、斎藤、伊藤、志鳥 日本薬学会第102 年会、1982、537
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11) 小倉、坪山、丸山、古畑 同上、537
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12) 小倉、古畑、石川、伊藤、志鳥 同上、537
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13) 小倉、古畑、坪山、石川、伊藤、志鳥、第5回糖質シンポジウム、1982、82
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14) I.Kijima, K.Ezawa, S.Toyoshima, K.Furuhata, H.Ogura, T.Osawa, Chem. Pharm. Bu11., 30, 3278 (1982)
■プログラム
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(1) シアル酸物語
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東京都臨床医学総合研究所 山川民夫
山川先生のお話しはさすがに面白く、多数の出席者を集め、引きつづき懇親会を行った。
山川民夫先生にシアル酸研究会の会長をお願いし、今後の研究会を公開とすることを決めた。
■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
司会 小倉治夫
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(1) 糖脂質糖鎖の遺伝的制御
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東京都臨床医学総合研究所 鈴木明身
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(2) シアル酸の合成に関する最近のトピックス
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理化学研究所 小川智也
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(3) 総合討論
出席者:
東京都臨床医学総合研究所 山川民夫、鈴木明身
北里研究所 秦 藤樹
北里大学 小倉治夫、古畑公夫
東京大学 大澤利昭、豊島 聡
理化学研究所 小川智也
東京薬科大学 小林義郎、菊池豊彦
鳥居薬品㈱ 天野正文、青山卓夫
関東医師製薬㈱ 志鳥善保、西川 裕、伊藤正善、堀内次郎、吉村昌治、杉山直和、須田 巧、藤田秀司
(20名)
終了後、忘年会
この年は、日本薬学会第103年会においてシアリルラクトース合成の報告を行った(15)。
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15) 小倉、古畑、伊藤、志鳥 日本薬学会第103年会、1983、207
■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
司会 小倉治夫
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(1) ガングリオシド GM2, GD2と同定されたヒト腫瘍関連抗原
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東京都臨床医学総合研究所 田井 直
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(2) シアル酸含有糖脂質の生体膜機能
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東京大学 永井克孝
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(3) 総合討論
第7回シアル酸研究会は出来るだけ案内状を出して、公開したので、多くの出席者があった。終了後、懇親会を行った。
この年は、日本薬学会第104年会においてシアロヌクレオシドの合成について、第28回日本薬学会関東支部大会において2-デオキシ-2, 3-デヒドロ誘導体の合成と、これを用いた新しいグリコシド合成法について発表した(16)。
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16) 小倉、藤田、古畑、伊藤、志鳥、吉村 日本薬学会 第104回大会、1984、229;小倉、穴沢、古畑、伊藤、志鳥 日本薬学会関東支部第28回大会、1984、70
■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
司会 小倉治夫
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(1) 血球分化と細胞表面糖鎖の構造変化
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東京大学医科学研究所 木幡 陽
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(2) 分枝糖及び分枝糖誘導体の合成研究
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東京工業大学 吉村寿次
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(3) 総合討論
引き続き、懇親会を行った。
主催 シアル酸研究会、共催 理化学研究所
■プログラム
開会挨拶 会長 山川民夫
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座長 野島庄七 |
10:00-10:50 |
Recent Progress on Chemistry of Lipopolysaccharide
リポリサッカリドの化学-最近の進歩-
芝 哲夫(阪大・理)
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座長 須網哲夫 |
10:50-11:40 |
Synthesis of Biologically Active Compounds Containing Cyclitols
シクリトール類の化学-最近の進歩-
小川誠一郎(慶応大・理工)
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座長 首藤紘一 |
11:40-12:30 |
Synthetic Studies on Glycosphingolipids
スフインゴ糖脂質の合成研究
小川智也(理研・農薬化学)
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12:30-13:30 |
昼 食 |
座長 吉村寿次 |
13:30-14:30 |
Synthesis of Complex Oligosaccaride-Chains of Glycoconjugates
オリゴ糖合成-最近の進歩-
H. Paulsen(University of Hamburg)
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座長 宮崎利夫 |
14:30-15:20 |
Biological Activities of Slalic Acid Nucleoside
合成シアル酸ヌクレオシド化合物の生物活性
大澤利昭(東大・薬)
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15:20-15:50 |
Coffee Break |
座長 木幡 陽 |
15:50-16:40 |
Studies of Bioactive Gangliosides
生理活性カングリオシドの研究
永井克孝(東大・医)
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座長 小倉治夫 |
16:40-17:40 |
Biochemistry of Sialic Acids
シアル酸の生化学
R.Schauer(University of Kiel)
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閉会挨拶 小倉治夫(北里大学・薬学部) |
18:00-20:00 |
懇親会 |
△ CLOSE
第9回シアル酸研究会は山川先生の肝入りで、国際会議として開かれた。関東医師製薬㈱のご厚意により、住友ホールを用い、アブストラクトを用意することができて、更に、国外から、シアル酸の世界的権威である、パールセン教授とシャウァー教授を招くことが出来た。特に、シャウアー教授とはその後も密接な関係を保ち、日独シアル酸シンポジウムを開催することになった。
本シンポジウムでは300名をこえる出席者があった。
この年は、日本薬学会のほか第8回糖質シンポジウムにおいてシアロヌクレオシド誘導体、2-デヒドロ誘導体について報告した(17,18,19,20)。春には、日本化学会春季大会において特別講演にノミネートされ、総合発表する機会をえた(21)。この年は、更に第8回glycoconjugatesシンポジウムがHustonで行われ、2-デヒドロ誘導体(22)、5-アミノ誘導体(23)について報告した。
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17) 小倉、藤田、古畑、伊藤、吉村、志鳥 第l05年会、1985、633
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18) 小倉、宇土、古畑 同上、634
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19) 小倉、穴沢、古畑 同上、634
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20) 小倉、古畑、穴沢、藤田 第8回糖質シンポジウム、1985、31
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21) 小倉 日本化学会春季大会、1985、1650
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22) H.Ogura, K.Furuhata, K.Anazawa, M.Goto, H.Takayanagi, M.Itoh, Y.Shitori, VIII International Symposium on Glycoconjugates, 1985. 180
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23) S.Yoshimura, S.Shibayama, M.Itoh, Y.Shitori, H.Ogura, ibid., 185
主催 シアル酸研究会
■プログラム
開会挨拶 会長 山川民夫
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座長 野島庄七 |
9:30-10:30 |
Monoclonal Antibodies Recognizing Cancer-associated Alterations of Crbohydrate Chains of Glycoproteins
糖タンパク質糖鎖の癌関連変化を識別する単クローン抗体
山科郁男(京大・薬)
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座長 木幡 陽 |
10:30-11:30 |
Monoclonal Antibodies Directed against Sialic Acid-containing Glycoconjugates
Victor Ginsburg(NIH)
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座長 大澤利昭 |
11:30-12:30 |
Chemistry of Tumor-associated and Allogenic Glycolipid Antigens with New Structures
箱守仙一郎(Fred Hutchinson Cancer Res.Ctr.)
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12:30-14:00 |
昼 食 |
座長 鈴木明身 |
14:00-15:00 |
Idiotypes and Regulation of Antibodies Directed against Carbo- hydrate Determinants
Donald M. Marcus(Baylor College of Medicine)
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座長 吉村寿次 |
15:00-15:45 |
Studies on Glycosylation Reactions of Slalic Acid
シアル酸のグリコシル化反応について
小倉治夫(北里大・薬)
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15:45-16:15 |
Coffee Break |
座長 小川智也 |
16:15-17:00 |
Application of FAB-MS to Glycolipid Chemistry
-Structure and Metabolism of Thymus Glycolipids-
FAB-MSの糖鎖解析への応用-胸腺糖脂質の構造と代謝-
岩森正男(東大・医)
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座長 永井克孝 |
17:00-18:00 |
Structural Studies on Sialylated Glycoconjugates
Heinz Egge(Universlty of Bonn)
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18:00-20:00 |
懇親会 |
△ CLOSE
このシンポジウムは、山川会長の肝入りで、多くの著名外国人講師を招くことが出来たので、出席者は440名を数え、シアル酸研究会始まって以来の盛況となった。関東医師製薬㈱のご厚意により、要旨集を準備することが出来た。なお、第9回、 第10回の講演は英語で行われ、第10回会議は特に、同時通訳を用意することが出来た。この頃から、日本国内はもとより全世界的にシアル酸関連研究が大きく進歩した。
■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
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座長 小倉治夫
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(1) 脱水縮合による糖鎖合成について
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北里大学 厚東伸吉
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座長 膳昭之助
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(2) シアル酸のエステル誘導体について
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北里大学 古畑公夫
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座長 阿知波一雄
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(3) シアル酸を含有する糖脂質の合成研究
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メクト株式会社 杉本 守
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座長 小川智也
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(4) シアル酸類縁体及びその複合配糖体の合成研究
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岐阜大学 長谷川明
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座長 吉村寿次
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(5) ガングリオシドの合成
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名古屋大学 後藤俊夫
Organizlng Committee: Roland Schauer; Tamio Yamakawa
Secretaries: Gerd Reuter; Elfriede Schauer; Akemi Suzuki
Symposium Address: Japanisch-Deutsches Zentrum Berlin、Tiergartenstr. 24-27、D-1000 Berlin 30
■プログラム
5月18日
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Opening Ceremony
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(1) Brief History of the Japanese Sialic Acids Society
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T.Yamakawa
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(2) Support of German Science by Hajime-Hoshi and Gunshiro Mothizuki
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E.Friese
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(3) The Early History of Sialic Acids
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H.Faillard
5月19日
Chairmen: H.Paulsen; A.Hasegawa |
8:30- |
Synthesis of Sialic Acld Glycosides
H.Ogura
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9:00- |
Synthesis of Sialic Acid Analogues and their Behaviour towards Enzymes of the Sialic Acid Metabolism
E.Zbiral
|
9:30- |
Recent Aspects in Ganglioside Synthesis
M.Sugimoto, M.Numata, T.Ogawa
|
10:30- |
New Sialic Acid-like Sugars: Components of Bacterial Lipopoly- saccharides
Yu.A.Knirel
|
11:00- |
Synthesis of Sialyl Le(a) and Le(x) Glycosides
A.Venot, R.M.Ratcliffe
|
11:15- |
Synthesis of CMP-Neu5Ac and Neu5Ac(α2-3)Gal(β1-3)Gal NAc((α)- OEt with Immobilised Cytidin-5'-Monophosphosialate Synthase and β-D-Galactoside ((α2-3)Sialyl-transferase
K.G.I.Nilsson, B.-M.E.Gudmundsson
|
11:30- |
Posters
|
Chairmen: H.Egge, T.Osawa |
14:30- |
Sialic Acid-Containing Bacterial Polysaccharides
H.J.Jennings, F.E.Ashston, J.-R.Brisson, A.Gamian, F.Michon, R.Roy
|
15:00- |
Structure, Synthesis, Function of Polysialosyl-Containing Glycoproteins on Cells of Neural Origin
B.D.Livingston, R.D.McCoy, J.L.Jacobvs, M.C.Glick, F.A.Troy
|
15:30- |
Sialic Acids in the Lipopolysaccharides of Purple Nonsulfur Bacteria
J.H.Krauβ, G.Reuter, R.Schauer, H.Mayer
|
15:45- |
Analysis of N,O-Acylneuraminic Acid-Containing Carbohydrate Chains in N-Glycoproteins
J.P.Kamerling, J.B.L.Damm, K.J.Hard, J.F.G.Vliegenthart
|
16:30- |
Genetic Control of Globoglycolipid Expression in Mause Kidney
M.Sekine, K.Nakamura, M.Suzuki, F.Inagaki, T.Yamakawa, A.Suzuki
|
16:45- |
Investigations on the Biosynthesis of Sialic Acid in Aortic Tissue and Cultured Arterial Wall Cells
P.Vischer, C.Hagemeier, E.Buddecke
|
17:00- |
Posters
|
5月20日
Chairmen: H.Rahmann, A.Kobata |
8:30- |
Expression of β-Galactoside α2,6 Sialyltransferase in Chinese Hamster Ovary Cells Alters Terminal Glycosylation Sequences of N-Linked Carbohydrate Groups
E.U.Lee, J.Weinstein, J.C.Paulson
|
9:00- |
Specificity and Inhibition of Sialyltransferases
D.H.Van den Eijnden, W.E.C.M.Schiphorst
|
9:30- |
Subcellular Distribution of Sialyltransferase and Sialic Acid Residues
J.Roth
|
10:30- |
The Intracellular Routes of Ganglioside Metabolism
G.Tettamanti, R.Ghidoni, M.Trinchera
|
11:00- |
Myxovirus Sialidases: Structure, Specificity, Biosynthesis, Genetics and Function
C. Scholtissek
|
11:30- |
Posters
|
Chairmen: E.Buddecke, Y.Suzuki |
14:30- |
Study of the Mechanism of CMP-NeuAC Transport in Normal and CMP- NeuAc Carrier Deficient CHO Cells Using Plasma Membrane Permeabilization Technique
A.Lepers, R.Cacan, A.Verbert
|
14:45- |
Acetylation and De-Acetylation of Sialic Acids in the Rat Liver
A.Varki, A.Manzi, S.Diaz, H.Higa
|
15:00- |
The Biosynthesis of N-Glycoloylneuraminic Acid Occurs by Hydroxylation of the CMP-Glycoside of N-Acetylneuraminic Acid
L.Shaw, R.Schauer
|
15:15- |
Metabolism of O-Acetylated Sialic Acids
R.Schauer, G.Reuter
|
Chairman: Graf von Brockdorff |
16:00- |
Support of German Science by Hajime Hoshi and Gunshiro Mochizuki
E Friese
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16:45- |
Films and Information on Berlin
|
Chairmen: E.Buddecke, Y.Suzuki |
20:00- |
Molecular Heterogeneity of Protective Protein in Galactosialidosis
Y.Suzuki, E.Nanba, A.Tsuji, K.Omura
|
20:15- |
Cloning and Molecular Analysis of Neuraminidase Genes from Vibrio cholerae and Salmonella typhimurium
E.R.Vimsr, L.Lawrisuk, J.Galen, J.B.Kaper
|
20:30- |
Isolation and Properties of Rat Liver Sialidase
S.Tsuiki, T.Miyagi
|
21:00- |
Gangliosides as Substrates for Sialidases and Sialyltransferases
K.Sandhoff, D.Klein, G.Pohlentz, G.Schwarzmann
|
21:30- |
Lysosomal Sialidase Deficiency
M.Cantz, B.Ulrich-Bott, M.Lieser
|
5月21日
Chairmen: K.Decker; I.Yamashina |
8:30- |
Role of Oncogenes in Ganglioside Biosyntheses
Y.Nagai, Y.Sanai, H.Nakaishi
|
9:00- |
Sialic Acids in Cancer Metastasis: Experimental Studies
V.Schirrmacher, P.Altevogt
|
9:30- |
Inhibition of Tumor Metastasis with Sialic Acid Derivatives
T. Osawa
|
10:30- |
Immunology of Sialic Acids on the Erythrocyte Surface
D. Roelcke
|
11:00- |
Structures of Sialic Acid-Containing N-Glycans in Cancer Cells
A.Kobata
|
11:30- |
Posters
|
Chairmen: W.Reutter, K.Tomita |
14:00- |
Sialic Acid Specific Recognition Protein of Pathogenic Escherichia coli
K.Jann, B.Jann, H.Hoschutzky, T.Moch
|
14:30- |
Monoclonal Antibodies Directed Against Sialylated Oligosaccharides from Malignant Tissues
I.Yamashina
|
15:00- |
CMP-Sialic Acid Hydrolase. A Cell Surface Enzyme Implicated in Colorectal Cancer
Corfield, S.A.Wagnaer, R.Roe, W.van Dijk, J.R.Clamp
|
15:15- |
Gangliosides and their Structurally-Related Synthetic Sialoglyco compounds Play Crucial Roles in both the Differentiation-Induction and the Determination of Differentiation-Directions of Human Myelogenous Leukemia Cells
M.Saito, H.Nojiri, S.Kitagawa, T.Ogawa, H.Ogura, M.Ito, Y.Nagai
|
Chairmen: Y.Nagai, R.Schauer |
16:00- |
VH Gene Expression in the Monoclonal Antibodies Directed to Gangliosides Having Various Sialic Acid Linkages
K.Zenita, K.Hirashima, K.Shigeta, N.Hiraiwa, R.Kannagi
|
16:15- |
The Biological Activity of the Plasma Membrane Glycoproteins Involved in Contact-Dependent Inhibition of Growth is Dependent upon the Degree of Sialylation
R.J.Wieser, F.Oesch
|
16:30- |
The Role of Sialic Acid in the Attachment of Encephalomyocarditis Virus to Human Erythrocytes
I.U. Pardoe, A.T.H. Burness
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16:45- |
In vivo Desialylation of High Endothelial Venules Inactivates Attachment Sites for Blood-Bjorne Lymphocytes
S.D. Rosen, S.-I. Chai, D. True, M.S. Singer, T.A. Yednock
|
17:00- |
ROUND TABLE DISCUSSION
Recent progress and future trends in sialic acid research
|
△ CLOSE
ポスター発表は、SYNTHESIS15題, ANALYSIS, STRUCTURE 16題, BIOSYNTHESIS 9題, CLONING 2題, DEGRADATION 14題, ROLE IN MALIGNANCY 13題, BIOLOGICAL PHENOMENA 25題で合計94題に及んだ。
この日独シアル酸シンポジウムは、新装なった「日独センター」(旧日本大使館)で、こけら落としの一環として開催されたから、その意味でも大変な成功であった。この年の翌年には東西両ドイツの併合があり、記念すべき壁が壊されたが、当時はまだ現存していた壁を越えて、博物館の見学や東ドイツのバス旅行など、山川先生を団長として行われた。Schauer教授のお骨折りで、proceedings が発行され「SIALIC ACIDS 1988」として今日に残っている。参加者も日本、ドイツの他、広くヨーロッパ各地からも多く、記録的であった。その後、日独シアル酸シンポジウムは開かれていないが、このシンポジウムを機にヨーロッパはじめ世界各国で、国際シアル酸シンポジウムが開催されている。我が国では、2006年に開催される。
■プログラム
August 18(Sat)
13:30- |
Opening Remarks
Prof. T. Suami Prof. J. Yoshimura Prof. P.J. Garegg
|
Moderators; H. Paulsen, H. Ogura |
14:00- |
The use of synthetic oligosaccharides in the study of the galactose receptor of macrophages
R. Schauer
|
New aspects of glycosylation reactions
R.R. Schmidt
|
Sialic acid analogues as useful probes for structure activity relationships
E. Zbira1
|
Moderators; P. Sinay, T. Ogawa |
16:20- |
Stereochemical regulation in synthesis of polyfunctional carbocycles by chirality transfer from unsaturated sugar derivatives
D. Horton
|
The synthesis and immunochemical properties of extensively deoxygenated derivatives of the H-type 2 blood group determinant
R.U. Lemieux
|
August 19(Sun)
Moderators; F.W. Lichtenthaler, S. Nishiyama |
9:00- |
Combined classical and chemoenzymic glycosylations
J. Thiem
|
New strategies in the synthesis of β-D-galacto-oligosaccharides. A synthetic heptasaccharides reveals the 'Groove-binding' character of a monoclonal antibody
P. Kovac
|
Moderators; L. Anderson; S. Ogawa |
10:40- |
Recent results in the synthesis of oligosaccharides related to cell-wall glycans
V. Pozsgay
|
From sugars to alkaloids morpholines and spiroacetals
L. Hough
|
August 20(Mon)
Moderators; D. Horton, T. Machinami |
9:00- |
Glycals and C-glycosides synthesis
G.D. Daves,Jr.
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Recent results in stereocontrolled synthesis of C-glycosides and C-nucleosides
S. Czernecki
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Moderators; A.C. Richardson, E. Kaji |
10:40- |
Radical functionalization of the anomeric center of carbohydrates and synthetic applications
G. Descotes
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Recent results in stereocontroled synthesis of C-glycosides and C-nucleosides
F.W. Lichtenthaler
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Moderators; R.U. Lemieux, A. Hasegawa |
13:00- |
lmprovements in the synthesis of trehalose-based mycobacterial lipids
L. Anderson
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Synthesis of phenolic glycosides as chromogenic substrates for the assay of glycosidases
A.C. Richardson
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Synthesis of structuares of the inner core region of lipopolysaccharides
H. Paulsen
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この国際会議を基礎にして "Carbohydrate-Synthetic Methods and Applications in Medicinal Chemistry" Edited by H.Ogura, A.Hasegawa and T.Suami をKODANSHA-VCHから出版した。
平成4年度定年退職にあたり、「シアル酸をリード化合物とする生理活性物質の探索」というタイトルで、薬学雑誌に論文を掲載した。引用論文を参照されたい。【小倉治夫、薬学雑誌、114(5) 277-303 (1994)】
■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
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シアル酸関連研究の最近の進歩
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三菱生命研究所所長 永井克孝
■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
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病態に関与する糖鎖と糖鎖認識分子を巡る最近の進歩
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東京大学薬学系研究科教授 入村達郎
■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
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シアロ糖脂質ガングリオシドの生物機能を求めて
―GM3合成シアリルトランスフェラーゼの分子クローニング―
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国立がんセンターウイルス部長 斉藤政樹
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[要旨]
シアル酸を有するスフィンゴ糖脂質、ガングリオシドは、細菌、ウイルスや様々な外来性リガンドの受容体機能、細胞間相互認識・識別・接着等の細胞社会学的機能を担う一群の両親媒性分子ファミリーを形成して、その糖鎖構造が細胞の抗原性、免疫原性など、謂わば「細胞の顔」を決定し特徴づけていると言われる。また以前から、細胞増殖・分化、癌化過程、神経機能、炎症・免疫反応などにダイナミックに関与していることが現象論的に論じられてきた。一方、疎水性セラミド基は糖鎖の機能を支持し、外来性の糖脂質分子が表面膜へ組み込まれる際に重要な役割を演じていると言われてきた。
我々は以前から、ガングリオシド組成がヒト骨髄性白血病細胞の分化誘導過程で激変し、一方、その特定分子種は白血病細胞の増殖抑制と分化を誘導し、糖鎖構造変動が分化の方向性と密接に関連していることを明らかにして来た。即ち、ガングリオシドGM3により単球系分化が誘導され、ポリ-N-アセチルラクトサミン直鎖構造のネオラクト系ガングリオシドにより顆粒球系分化誘導される。
最近、ガングリオシドGM3合成酵素(シアリルトランスフェラーゼ-1)の遺伝子クローニングに国際的に初めて成功した。この遺伝子がコードする糖転移酵素は、他のシアル酸・]移酵素と同様に2つのシアリルモテイーフ(LとS)とN端近くに膜貫通ドメインを持ち、II型の膜蛋白である。C末側に少なくとも3ヶ所の強い疎水性ドメインが存在する。今までに遺伝子クローニングされているシアル酸転移酵素に比べ、シアリルモチーフL内に特異的なアミノ酸残基変異を認めた。この変異は動物の種を超えて共通であった。また各臓器の遺伝子発現量には、顕著な臓器特異性、種特異性が認められた。発現された酵素蛋白の基質特異性は、極めて厳格であった。周辺領域を含めて最新のデータを論じたい。
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■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
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グリコリルノイラミン酸の発現制御
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理研フロンテイア研究システムデイレクター 鈴木明身
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[要旨]
ノイラミン酸(neuraminic acid)は脳(neuro)の酸性糖脂質であるガングリオシドの酸水解で得られた酸性アミノ糖に対して Ernst Klenk がつけた名称である。N-アセチルノイラミン酸(NeuAc)、N-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)を基本に30種を超える誘導体が生体物質として存在するが、これらの誘導体ファミリーをシアル酸とよぶ。
ウマ、ヒツジ、ヤギで作られた抗血清を感染症の治療に使うと、治療を受けたヒトの血清中に異種動物の抗原に対する抗体が産生される。抗原は NeuGc を末端に持つ糖鎖であることが明らかにされた。ヒトの正常組織の糖脂質や糖タンパク質には NeuGc は検出されないことから、ヒトでは NeuGc を含む糖鎖は異常な糖鎖として、抗体産生が起きると理解される。
NeuGc の生合成は CMP-NeuAc の水酸化反応が律速であることが明らかにされていた。この水酸化反応にシトクロムb5が関与することを発見し、この事実に基づいて水酸化反応は NADH, NADH-シトクロムb5脱水素酵素、末端の水酸化酵素の関与する複合反応であることを明らかにした。その後、末端 CMP-NeuAc 水酸化酵素をマウス肝臓シトゾールから精製し、さらに、cDNA をクローニングした。 NeuGc を発現する動物は、酵素の mRNA を脳を除く各臓器で発現している。内臓の臓器で NeuGc を発現する動物においても、NeuGc が神経系で見出されないのは、水酸化酵素の組織特異的抑制機構があることを示唆している。
ヒトにはマウスの水酸化酵素に類似の配列があることがわかり、ヒトホモローグ cDNA をクローニングした。その結果、ヒトではマウスのエクソン5に相当する92bの配列に欠損があり、そのために、活性を持たないタンパク質が作られることが示された。Varki らは、チンパンジーの水酸化酵素の cDNA をクローニングし、ヒトで見られる欠損はなく、チンパンジーの水酸化酵素活性を発現し、NeuGcを発現することを明らかにした。ヒトの CMP-NeuAc 水酸化酵素の欠損はヒトの祖先がチンパンジーから分岐した後で起きていることを示唆している。
この欠損がヒトにとってどのような意味を持つのか、統合糖鎖生物学の重要な課題の一つである。
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■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
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インフルエンザウイルスの宿主とレセプター特異性
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東京大学医科学研究所教授 河岡義裕
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[要旨]
インフルエンザウイルスはヒトのみならず、ブタ、ウマ、家禽、そして野生の鳥類など様々な動物から分離される。疫学的、そして分子遺伝学的研究から、哺乳動物から分離されるインフルエンザウイルスはもともとは野生の鳥類(特にカモなどの水禽類)に由来することがわかってきた。しかし、実験的には、トリ・インフルエンザウイルスはヒトでは増殖せず、ヒト・インフルエンザウイルスもカモでは増殖しない。すなわち、これらのインフルエンザウイルスの宿主域には制限があることがわかる。
すべてのインフルエンザウイルスは、シアル酸を末端に持つ糖鎖をレセプターとして認識する。しかし、ヒトとトリのインフルエンザウイルスではレセプター特異性が異なる。前者は、シアル酸がガラクト−スに α2-6 結合した糖鎖を、後者はシアル酸がガラクト−スにα2-3 結合した糖鎖を特異的に認識する。私たちは、インフルエンザウイルスの宿主域を制限している要因を明らかにするために、ウイルスのレセプターに注目し研究を進めてきた。その結果、シアル酸 ー ガラクト−ス間の結合様式の違い、さらにはシアル酸の相違が、インフルエンザウイルスの宿主域の制限に大きな役割を果たし、またこのレセプター特異性の違いはわずかなアミノ酸の相違によるものであることがわかってきた。
ヒトで世界的な流行(パンデミック)を起こすインフルエンザウイルスは、トリ・インフルエンザウイルスに由来する。したがって、私たちの得た知見は、トリ・インフルエンザウイルスがヒトに伝播し大流行を起こすにはどのようなアミノ酸変異が必要であるかを明らかにし、ひいてはインフルエンザ・パンデミックの予知につながる。
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■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
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形質膜シアリダーゼとがん・糖尿病
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宮城県立がんセンター研究所 宮城妙子
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[要旨]
細胞の増殖、分化、がん化に際して、シアル酸量が鋭敏に変化する。しかしながら、この変化の機構についてはいまだ不明の点が多い。われわれはシアル酸量調節の重要な一端を担っているシアリダーゼの研究を通じて、生理的脱シアリル化機構の解明、さらに、癌化などの病態に関連するシアル酸変化の機構の解明をめざしてきた。その結果、動物起源のシアリダーゼについてはこれまで、細胞内局在や基質特異性が異なる少なくとも3-4種が存在することを生化学的手法によって同定し、細胞質局在型シアリダーゼおよび形質膜局在型シアリダーゼの遺伝子クローニングに成功した。これらのcDNAをツールとして、シアリダーゼが細胞分化やがん化、がん転移などに関わっていること等が次第に明らかになってきた。本講演では、最近新たな展開がみられた形質膜局在型シアリダーゼについて報告したい。
形質膜局在型シアリダーゼ(Neu3)はガングリオシドを特異的に水解することから、細胞間相互作用やシグナル伝達など、細胞表層における種々の細胞機能に関与していることが期待されてきた。蔗糖密度勾配遠心法により、Neu3が低密度のTriton X-100不溶性膜画分にカベオリンと共に濃縮されるなど、シグナリングに関与しているという証拠も挙がってきている。
1973年、Schengrundらは悪性転換BHK細胞でガングリオシドを基質としたシアリダーゼ活性が対照細胞に比べて高活性を示すことを報告し、その後、われわれはマウス上皮由来JB6細胞をホルボールエステルTPAによって悪性転換すると、この酵素活性が3-4倍に上昇することを見いだした。そこで、ヒトがんにおけるNeu3発現を調べると、大腸がんなどの消化器がんや前立腺がん等において、著しく高発現していることが明らかとなった。大腸癌培養細胞を用いて、ブチル酸により分化やアポトーシスを誘導すると、分化マーカーであるアルカリホスファターゼ活性の上昇に際してNeu3の発現はむしろ低下傾向を示した。Neu3遺伝子を導入すると、アポトーシス抑制が観察された。Neu3の発現亢進ががん細胞を細胞死から回避させる結果をもたらしている可能性が推察される。
本酵素の機能をさらに明らかにする目的で、遺伝子導入マウス(TG)を作成した。約25週後に4系統の雄マウスにおいて、耐糖能およびインスリン産生異常が観察された。インスリン負荷試験は血糖の低下を認めず、対照マウスに比べて有意な高値を示した。TGマウスの膵ラ氏島は著明な肥大を示し、ラ氏島数の増加が認められた。インスリン抗体による免疫染色像ではラ氏島全体が染色され、インスリン産生が活発に行われていることがわかった。TGマウス筋においてインスリンレセプターおよびIRS-1のリン酸化の減少が認められた。このシグナルの下流にあるグリコゲン合成の律速酵素あるグリコゲン合成酵素の活性も低下していた。Neu3の反応産物であるGM1や GM2がインスリンレセプターのリン酸化を修飾しているようであった。シアリダーゼ異常発現の機構や意義の解析を通じて、本シアリダーゼを標的とした癌や糖尿病の新しい診断・治療法の開発をめざしている。
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■プログラム
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開会挨拶 会長 山川民夫
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化学的アプローチによるシアロ糖鎖生物学
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岐阜大学農学部教授 木曽 真
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[要旨]
[1]白血球接着分子「セレクチン」が認識する糖鎖リガンドの構造と機能
著者らは、合成シアリルLewis X(sLex) ガングリオシドを用いて、sLex がセレクチンの共通リガンドであることを報告してきた(J. Cell Biol., 117, 895, 1992)。その後、L-, E-及びP-セレクチン固有のリガンドの存在が示唆されてきた(Cell, 103, 467, 2000)。L-セレクチンは、リンパ節内にある高内皮細静脈(HEV)上に存在するシアロ糖鎖リガンドを認識して白血球交通をコントロールしている。著者らは、新たに硫酸化sLexの全合成に成功し、その特異抗体を用いて、L-セレクチンの内在性リガンドが6−スルホsLexであることを初めて分子レベルで証明した(J. Biol. Chem., 273, 11225, 1998)。この研究成果は更に6−スルホsLexの生合成研究へと展開(Carbohydr. Res., 328, 85, 2000)、新たな高親和性リガンド6−スルホデ−N−アセチルsLexを見出した(Angew. Chem. Int, Ed., 38, 1131, 1999)。この発見は、更にラクタム化シアル酸を含む新しい免疫制御システムの発見へと大きく展開し(Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 96,1597, 1999)、現在更なる追究を行っている。
[2]シアル酸認識レクチン「シグレック」の高親和性リガンドの発見
シアロ糖鎖と結合するレクチンとしては、インフルエンザヘマグルチニンやセレクチンの他に、近年「シグレック」(Siglec, Sialic acid binding Ig-like lectin)と呼ばれる接着分子が注目されている。これらは、1998年までシアロアドヘシン・ファミリーとかI-型レクチンと呼ばれ、イムノグロブリン(Ig)・スーパーファミリーに属し、現在までにSiglec-1〜11についてcDNAのクローニングが報告されている(J. Biol. Chem., 274, 24466, 2002)。著者らは、コリン作動性ニューロンに特異的に発現するChol-1(α−シリーズ)ガングリオシドGQ1bα, GT1aα及びGD1αの系統的合成を世界で初めて達成し(J. Synth. Org. Chem. Jpn., 58, 1108, 2000)、それらがミエリン結合性タンパ(MAG)の高親和性リガンドであることを明らかにした(J. Biol. Chem., 274, 37637,1999)。この研究成果は、更に新たなMAGの超高親和性リガンドGSC-338の発見「化学と生物,39,454(2001)」へと展開し、現在シグレックの新たな内在性リガンドの究明とX線結晶構造解析による構造生物学的研究を進めている。
[3]破傷風毒素のレセプターと構造生物学的研究
強力な神経毒として知られる破傷風毒素のHcフラグメントを、合成ガングリオシドGT1b糖鎖アナログと結晶化させることにより、初めて毒素の特異的結合サイトを解明した(J. Biol. Chem.,276, 32274, 2001)。結合サイトは2ヶ所あり、1つはシアル酸部分、他方はガラクトースを中心とした糖鎖部分で、主として水素結合と疎水性結合によりタンパク質との相互作用が行われている。この分子機構は、ボツリヌス毒素のそれと類似し、将来これら毒素の治療薬開発に重要な情報を与えた。
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GlycoTOKYO 2003 シンポジウム
日 時:平成15年11月22日(土)13:00〜17:40
会 場:北里大学薬学部コンベンションホール (北里生命科学研究所棟1階)
主 催:東京糖鎖研究会、シアル酸研究会
共 催:日本糖質学会、日本薬学会、日本化学会
主 題:生命科学における糖質
■プログラム
13:00 |
開会 |
13:05- |
平成15年度GlycoTOKYO奨励賞受賞講演
小胞体関連アスパラギン結合型糖鎖の合成研究−糖タンパク品質管理機構の解明を目指して−
松尾一郎(理研・細胞制御化学)
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フルオラス・タグ法による迅速糖鎖合成法の開発研究
三浦 剛(野口研・糖鎖有機化学)
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13:50- |
糖水酸基の位置選択的活性化に基づく糖鎖の効率的合成法開発
梶 英輔(北里大学・薬学部)
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14:20- |
自己免疫性神経疾患発症機序解明への化学的アプロ−チ
Campylo-bacter Jejuniリポオリゴ糖の合成研究
石田秀治(岐阜大・農学部)
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15:10- |
休 憩 |
15:30- |
新規インフルエンザシアリダーゼ阻害剤の合成と生物活性
本田 雄(三共株式会社・化学研究所)
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16:20- |
ヒト糖鎖遺伝子の網羅的解析で分かってきたこと −創薬への応用−
成松 久(産業技術総合研究所・筑波大大学院・医学研究)
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17:10- |
和漢薬に含まれる糖鎖化合物構造と薬理活性
山田陽城(北里大学・北里研究所)
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17:40- |
シアル酸研究会事業委員会
北里生命科学研究所棟2階211号室
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18:00- |
懇親会(北里大学薬学部学生食堂)
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△ CLOSE
日 時:平成16年11月6日(土)
主 催:シアル酸研究会
共 催:北里大学薬学部、日本糖質学会、日本薬学会
後 援:Japanツバメの巣事業協同組合
講演会:「今 話題のシアル酸ってなんだろう?」
場 所:北里大学薬学部2号館視聴覚教室
■プログラム
14:00 |
山川民夫会長 挨拶 |
14:05- |
Sialic acids: fascinating sugars in higher animals and man
Roland Schauer(キール大学)
[要旨]
シアル酸は、酸性の単糖で、高等動物の最も重要な部位に含まれていて、いくつかの微生物でも見出されている。特に、細胞膜の複合糖鎖に存在して、非常に重要な役割を担っております。その構造上の多様性は大変大きく、そしてそれらに対応して、生合成のための機構は複雑になります。置換基としてのシアル酸残基は、catabolic 酵素、特に sialidases の活性が強く、glycoconjugates(複合糖質)の転換レートに影響します。これらの複合糖質は、多種多様な細胞機能に関わります。生体器官の表面に存在する酸性分子によって、生体器官の表面は酵素による、また免疫学的な攻撃から保護されます。しかし、それらがまたいろいろな生理学的な受容体となって、毒素、および微生物の認識部位となり、その感染を許す結果となります。多くのウイルスは、細胞に感染する際にシアル酸残基を使用します。シアル酸残基は、また腫瘍生物学の決定的な役割りを果たすなど、生物学的に鋭敏な調節をする、むしろ、多才な分子であることがわかります。
この論文では、それらの進化によって、発展を刺激されて、環境の攻撃にも強い有機体を作り出したかもしれないことを議論します。しかし、それらの代謝異常は、病気を引き起こすかもしれません。
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15:05- |
インフルエンザのシアロバイオロジー
鈴木康夫(静岡県立大学薬学部、CREST, JST; COE 21th Century)
[要旨]
インフルエンザウイルスの流行の型の変異はウイルス膜抗原であるへマグルチニン(HA)およびイラミニダーゼ(レセプター破壊酵素、NA)の変異に起因し、全てのHAおよびNA亜型は野生水トリの世界に貯留されている(H1-H15, N1-N9)。A型ウイルスは、自然界で、水トリからヒトを含む他の動物種へ伝播する。自然界では、通常、宿主域は制限されている。私たちは、インフルエンザウイルスHAが認識する宿主細胞受容体の精密な化学構造を明らかにしてきた。その結果、ヒト、ブタ、トリ、ウマから分離されるインフルエンザA型ウイルス、およびヒトインフルエンザB型ウイルスは、いずれも共通してシアル酸(Sialic acid, SAと略記)を含む糖鎖を特異的に認識結合すること、特に、シアリルラクト系Ⅰ型およびⅡ型糖鎖(I型糖鎖:SAα2-6(3)Galβ1-3GlcNAcβ1-;II型糖鎖:SAα2-6(3)Galβ1-4GlcNAcβ1-)と強く結合することを明らかにし、A,B型ウイルスへマグルチニンの分子進化は、受容体シアロ糖鎖末端のシアル酸結合様式(SA2-3Gal, SA2-6Gal)とシアル酸分子種(Neu5Ac, Neu5Gc)の認識の変化として現れることを見出した。さらに、A型インフルエンザウイルスHA遺伝子の一塩基置換(唯一のアミノ酸置換、Leu226 → Gln; Ser228 → Gly)により、宿主域が変わり得ること、ブタが、トリウイルスがヒトへ伝播する上で中間宿主となること、自然宿主であるカモのインフルエンザウイルスが家禽類に伝播し、それが家禽宿主動物の間でサーキュレートしている間に、宿主動物の受容体糖鎖による進化上の選択を受け、HA分子内のアミノ酸置換が起こり、その置換がヒト型受容体認識特異性を持った場合、ブタを介さないで直接ヒトへ伝播する可能性などを明らかにした(1,5)。
1918_1919年に発生したスペイン風邪は、インフルエンザウイルス(H1N1)によるものであるが、感染症の歴史中最大級に位置する。この原因ウイルスは、当時分離されなかったが、我々は、残存ウイルスHAおよびNA遺伝子から、ウイルス粒子を再生し、その病原性、レセプター認識特異性を調べた。その結果も述べる(2)。さらに、トリインフルエンザウイルスNAとヒトインフルエンザウイルスのNAはわずか2つのアミノ酸置換により、酸性pHでの安定性が異なることを見出し、NAスパイクがウイルスの病原性、宿主域、世界流行(パンデミック)に深く関わることを明らかにした(3,5)。ウイルスの変異・進化に関する分子機構の知見は、ウイルスの変異を克服した抗インフルエンザ薬、ワクチンの開発の研究とリンクさせることが重要である。ここでは、新型トリインフルエンザの流行とヒトへの伝播機構、最近の抗インフルエンザ薬について述べる(4,5)。
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文献:
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1) Suzuki, Y., et al. J. Virol., 74(24), 11825-11831(2000).
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2) Kobasa, D. et al., Nature, in press
-
3) Suzuki, T., et al., FEBS LETT. 557, 228-232(2004)
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4) Ohta, T. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 42(42)586-5189(2003).
-
5) 鈴木康夫:ウイルス感染における糖鎖認識のプロセス 生化学 76, 227-233(2004).
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16:05- |
医食同源と燕窩
曽 兆明(崎陽軒総料理長)
[要旨]
「医食同源」、「薬食一如」
東洋文明、中でも中国医学では、食物と薬物は同じ源と考えられている。中国において、紀元前から「医食同源、薬食一如」の考え方のもとに食物による積極的な健康管理やさらには病気治療が行われてきた。その基本的理論が陰陽五行説である。また、日常の食生活から食べ物は体の調子を整える薬と考えられている。
中国の食文化はその時代の皇帝によって進化した。不老不死願望を求め、樺界中の食材を取り寄せ、飽食して来たグルメな皇帝たちが必ず食した珍味が「燕窩」である。
「燕窩」の調理法
燕窩は料理、デザートの両方に使用できる比較的特殊な食材です。ただし、調理する上で決して味付けを濃くしてはならない。
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17:30- |
懇親会(北里大学本館食堂)
曽 兆明先生特製の「燕窩デザート」提供
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